川瀬悠太さん(理工学研究科 自然?応用科学専攻 博士1年)が「2024年度量子ビームサイエンスフェスタ」にて学生奨励賞を受賞

掲載日2025.05.23
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凤凰体育平台7年3月12日?14日に茨城県つくば市で開催された「2024年度量子ビームサイエンスフェスタ」にて、理工学研究科 自然?応用科学専攻 博士1年(受賞当時、総合科学研究科 理工学専攻 数理?物理コース 修士2年)の川瀬 悠太さんが学生奨励賞を受賞しました。本賞は、当該のサイエンスフェスティバルにて行われたポスター発表会での優れた研究発表に対して授与されるものです。

受賞名 (受賞題目)

学生奨励賞
(「ミューオンg―2/EDM測定に向けたビームキック装置用高電圧パルス電源の開発」)

受賞年月日

凤凰体育平台7年3月13日

研究内容:

素粒子ミューオンの磁気的性質を特徴付けるパラメータの一つに、「ミューオンg―2」(じーまいなすつー)と呼ばれる物理量があります。g―2の理論値は現代素粒子物理学における標準模型に基づく計算により、0.4 ppm以下(250万分の1以下)の誤差で非常に高精度に計算されています。しかしながら、米?ブルックヘブン国立研究所(BNL)や米?フェルミ国立加速器研究所(FNAL)で行われた先行実験においては、g―2測定値と理論値との間には有意な乖離がある可能性が指摘されています。もしもこの乖離が本当に存在するのであれば、現在の素粒子標準模型では考慮されていない未知の新物理現象の存在が示唆されるため、精密な検証実験への期待が高まっています。
現在、茨城県東海村のJ-PARCではミューオンg―2の高精度測定を目指した実験計画が進められているのですが、この実験を実現するためには、新たな超精密ビーム制御技術の開発が必要となっています。この新たなビーム制御技術には、ミューオン加速装置から入射されたミューオンビームに対して百数十ナノ秒間程度(1000万分の1秒間強程度)の極々僅かな時間だけタイミング良く制動力を加えることで、測定を行う領域に正確にビームを導く能力が求められています。岩手大学の研究グループは、このような超精密ビーム制御を実現するビームキック装置を駆動するための、新奇な高電圧?大電流パルス電源の開発に参画しています。
本受賞発表に係る研究では、実機と同じサイズのビームキック用コイルとそれを駆動する電源試験機を用いた電圧?電流印加試験を行いました。試験の結果得られた電流波形には、g―2測定に悪影響を与える振動成分が含まれていることを発見しました。電源試験機のどこに波形振動の原因があるかを特定するために、回路シミュレータ上に電源回路の等価回路モデルを構築して電流波形をシミュレートし実測波形と比較することで、振動が発生する条件の特定と対策の検討を行いました。その結果、回路内の一定の場所に寄生容量成分や寄生抵抗成分が存在する可能性を見出し、対策としてマッチング回路の追加が有効であろうことも分かりました。この結果は現状の試験機に存在するであろう寄生成分の実測試験や電源設計の改良を進めていくにあたっての指針を与えるものであり、J-PARCでのg―2高精度測定実験の実現に向けて重要な役割を果たすものです。

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本件に関する問い合わせ先
岩手大学理工学部理工学科  数理?物理コース  細川 律也
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ritsuya@iwate-u.ac.jp